わが国のアフターマーケットは年の自動車整備の規制緩和を契機に大きな変化の時代に入った。この規制緩和は消費者の負担軽減に加え「選択肢の拡大」にウエイトを置いたものであった。特に検査と整備を分離し「整備は検査の前後を問わない」とした措置により代行業者による「ユーザー車検代行ビジネス」は大幅に拡大した。
一方、代行業者の進出により市場規模が縮小傾向にある「整備付き車検」の市場では価格競争が激化した。工賃が大きなウエイトを占める車検整備では作業の効率化が競争力の決め手となる。経営規模が小さく、さらに整備した車両を国の検査場に持ち込まねばならない認証工場は不利で、同一事業場で一貫した作業が可能な指定工場は効率化を図る余地が大きい。こうした中で車検整備市場における指定整備のシエアは年々、アップしている。
また、代行業者との差別化を図るため分解整備事業者はサービスのメニュー化、整備料金の明確化を推進した。この面ではいち早く料金の明確化を打ち出した整備業チェーン(アップル、コバック、ホリデーなど)に続き、短時間車検やニューサービスを導入したディーラーなどが大きくリードした。
◆GSSが整備付き車検に参入
それでは2001年度のアフターマーケットはどうなるのか?新車販売に若干の回復の兆しは見えるが、アフターマーケットは相変わらず「厳しい状態が続いている」との声が多く、整備市場の競争はさらに激化すると予想される。
すでに車検整備は「法定需要」からクルマのメンテナンスのための「サービスメニュー」に変化している。そして各業態とも消費者との「最も重要な接点」と位置付けている。こうした中で、本年度は整備業チェーン、ディーラー、ガソリンスタンド、カーショップなど各販売チャネルが、車検整備のブランド確立を目指して宣伝合戦を繰り広げることが予想される。
新規参入組では用品販売が不調のカーショップが車検整備への取り組みをさらに強化するだろう。さらに代行業者への丸投げが多いと言われていたガソリンスタンドも石油元売り主導で「整備付き車検」市場に本格参入する計画だ。
これは代行車検にはリピーターが少ないことに加え「近く予定されている自動車検査の独立行政法人化によりユーザーの利便性が向上し、車検代行ビジネスのメリットは減少する」との判断によるものだ。新しいガソリンスタンドの車検整備は「整備付き」を明確にアピールするほか、料金体系も簡素で明確なものとなるだろう。
◆消費者意識の変化に対応
本年度のアフターマーケットを展望する上で忘れてはならないのが、消費者意識の変化である。
年の規制緩和より5年が過ぎ、消費者はすでに2回の車検を向かえている。この間に整備事業者や新規参入者からの様々な情報提供が続き、整備に対する知識はかなり上昇していると予想される。単に「安いから」という理由で代行車検を選び「再入庫で思わぬ費用が掛かった」という経験もあるだろう。
今後、重要になるのは単なる価格訴求や料金の明確化ではない。
整備内容について説明責任を果たすということだ。確かに以前に比べて概算見積書の発行は徹底されてきている。しかし、そこに記されている内訳は車検基本料、継続検査料、完成検査料、検査代行手数料など消費者にとって、いかなる作業に伴う費用なのか理解できない「業界用語」が並んでいるのが実情だ。これらの用語を消費者が理解しやすい言葉に変更するか、あるいは理解しやすい体系に組替える努力が必要となるだろう。
迅速な見積書の提出は前提であり、見積書の分かりやすさ、それぞれの項目・価格に対し明確に説明できるかがポイントとなる。
こうした透明性を確保した車検整備ブランドが、消費者に好評をもって迎えられる時代が到来していると言えよう。
(編集長・白柳孝夫)