2003年・アフターマーケット展望

わが国の自動車整備市場は 94年の6兆5693億円をピークに減少に転じた。しかし、その減少幅は 00年までに6%であり、年率1%程度の減少に過ぎない。しかも、全ての整備事業者の売上が下がったわけではない。ディーラーは同じ時期に5%も売上を伸ばした。一方、ディーラー以外の業者(専業工場等)は 12%のダウンとなっている。
これを、さらに分析すると全ての整備工場が不振のわけではない。やはり零細規模の認証工場が 95年以降の苛烈な市場競争の中で圧迫されているようだ。例えば整備要員2〜4人の専業工場の、1工場当りの売上は同期間に19%も減少しているが、5〜 10人の場合は7%の減少、11人〜 30人の場合は1%の減である。
その理由は明確で、 年以降、指定工場の業務の効率化につながる規制緩和が実施され、力のある認証工場は指定を取得した。車検は指定工場に集まり、認証工場の車検整備シェアは縮小したのである。しかし一方で、ユーザー車検の増加により車検入庫のパイは限られたものとなり、車検獲得競争は激化した。車検基本料金はダウンを続け、いよいよ1万円前後の攻防となっている。
◎指定工場の展望
以上が2002年末までの状況である。今後の展開はどうなるのか?
現状で指定工場は2つのタイプに分かれる。1つは車検整備獲得を最大限に重視している工場。これらの工場では整備売上に占める車検整備のシェアが増えており、定期点検も一般入庫も減少している。
「車の品質が向上したので定期点検を受けるユーザーはいない。また、故障修理も減少している。タイヤ、バッテリー、オイル交換などメンテナンス整備はカーショップにかなわない。我々は最も競争力にある車検整備で勝負する」というのが、こうした工場の見解である。
これら車検中心型工場では、基本料金1万3000円の速太郎及びヤマト車検登場後の価格競争への対応を急いでいる。すでにGSSやカーショップでは、こうした先端価格に対応し、外注先の整備工場に価格引下げの交渉を始めているとのニュースも飛び交っているからだ。しかし、いずれにしても価格競争は臨界点が近づいており、行くところまで行けばストップせざるを得ないだろう。
もう1つのタイプは、指定工場である限り「車検は基本」としながらも、メンテナンス整備、付加価値整備、軽板金、故障整備などバランス良く取組もうという工場である。
こうした工場では「メンテナンス整備はカーショップが強いのは確かであるが、主婦層や中高年などカーショップに行かない層もある。また、低年式車が増えてきたので故障整備が増えている。事故車整備は減少したが、単価5万円前後の軽板金は増えている」と話す。しかし、取扱商品の幅が広がるのでフロント、メカニックの教育、ピット作業のローテーション等で苦労が多いという。
なお、これらの工場では車検整備の価格競争に巻き込まれないよう、付加価値型の商品を設定している例が多い。
◎ 認証工場の展望
最後に、それでもまだ全国に5万5000工場ある認証工場の将来展望はどうだろう。確かに車検整備では競争力に欠けるが、その他の一般整備では指定工場に負ける理由が無い。
むしろ、世界の整備市場においては腕に自信のあるメカニックが、1人か2人の見習を雇い、お得意先を相手に商売を続けるスタイルが一般的で、日本の指定工場のような整備工場の方が珍しいのである。
認証工場は世界のスタンダードに近い。小規模工場としての小回りを生かし、専門分野に特化してビジネスを展開すれば今後も生残りが可能と思われる。異業種から認証工場への参入が続いているのだから、ビジネスとしての魅力も充分ある事を経営者は理解すべきであろう。
(編集長・白柳孝夫)