2003年・補修部品流通の課題

 前号で整備市場の展望について書いた。今回は引き続き補修部品業界の展望について考えてみたい。
 整備市場にも「勝ち組」と「負け組」があり、トータルで見れば微減の状態が続いているように、補修部品業界も「悪い、悪い」という程、悲惨なものではない。例えば95年度の分解整備工場(ディーラー、整備工場の合計)の部品・材料売上高は2兆2258億円である。これが01年には2兆1953億円となった。6年間で1・3%程度の減少で、整備売上の減少幅より遥かに少ないのである。
 整備工場の社長さん達と話していると「部品の業者は儲かっているじゃない」と嫌味を言われることがあるが、ここ数年の整備工場の厳しさに比べると、確かに補修部品業界は、まだ余裕があるように見える。
「ここ数年の傾向は売上が上がっても利益が出ない。調べてみると部品・材料費が増えて、工賃の割合が減少している。整備工場にとって儲からない時代になって来た」。
このような整備業界の声を聞いて意外な感じを抱く方も多いと思うが、整備白書の数字を丹念に読んでいくと同様の傾向が現れている。保有構造が変化して中年式車が増えたことにより車検時の交換部品も増えているのだ。また、車齢10年を超えた車両では故障整備が増えている。これらの整備ではユーザーの「出来るだけ安く」の要望が強いにも関わらず、部品代が高く、売上に占める部品・材料費の割合が多くなる。
 一部の「安売り車検」にだけ目を奪われていると、こうした市場構造の変化に気が付かないので注意が必要だ。
◎ マーケティングが最重要
 わが国のアフターマーケットは97年頃から市場構造が大きく変化している。こうした中で「整備工場」という業態そのものが変化していく時代である。
補修部品の需要構造も変化している。従来の「商品」を軸とした分析が役に立たなくなっている。整備工場というビジネスそのものを分析し、その発展の方向性を探る中からしか補修部品市場の展望は出てこない。
 そのためにはマーケティングを業務の最重点課題とすべきである。「販売業務や配送で忙しいので、調査や企画は後回しで良い」という時代は既に終わったのである。自分の目で市場を調べ、場合によっては予算を準備して専門家の力を借りる必要もあるだろう。
「儲からないと愚痴ばかり言ってないで、たまには売れる商品を持ってきてくれよ。持ってくるのはつまらない商品ばかりじゃないか。それに顧客に説明するための説得力あるデータも付いてない」という整備工場の声を真摯に聞くべきである。 
◎ 「供給」より「調達」
 車検制度の枠組みが、がっちりと固まっていた時代は、予防整備の中で部品交換が行われていた。部品は待っていれば注文が来たのである。
 しかし、現在の整備工場はユーザーと対話しながら、市場ニーズを掴み、新たなサービスを事業化しなければならない。
 補修部品のニーズも、品質、価格、リードタイムなど顧客の要求が一律ではない。「車の調子を良くしたいので、こうした部品を探している」と顧客から相談を受けることもあるだろう。また「もう古い車だから、修理に費用を掛けたくない。品質は少し落ちても、安い部品でよい」といったニーズも生まれている。
 米国と同様に日本の整備工場でも部品の「買い回り」は発生しているのである。
今後の補修部品業界は市場ニーズに対応した部品の調達能力が問われることになるだろう。
(編集長・白柳孝夫)