韓国視察で親しくなった部品メーカーの社長が、自社の顧客である部品商の社長及び家族を引き連れて来日した。目的は日本のアフターマーケット視察。東京近郊の部品商、整備工場、カーショップ等を訪問したが、実に熱心に見学、質問していたという。
韓国での自家用乗用車の本格的な普及は80年代の後半からである。遅れてスタートしたものの需要は年率20%増と急速に拡大、保有台数は既に1400万台に達している。
需要の爆発的な増大にディーラー・システムの構築が間に合わず、ユーザーがメーカーの工場に直接、クルマを買いに行った時代もあった。車両の販売体制が間に合わない状況ではアフターサービス体制の構築は、さらに間に合わない。そこでメーカーが大都市郊外に直営の大型整備工場を開設して対応したが、オイル交換やバルブ切れやタイヤ交換など日常のメンテナンスのために、そこまで出かけるのはあまりに不便である。こうした一般庶民の日常のメンテナンスを担当しているのが、街角のカーセンターという業態である。日本のガソリンスタンドのピットを独立させたようなイメージで、従業員も2〜3人の零細業者。今回、訪日した韓国部品商は、こうしたカーセンターに部品を供給している業者で、平均的な従業員数はお得意先と同様に2〜3人だという。彼らが日本のアフターマーケットを見て何を感じたのか、帰国前日の夜に開催した、夕食を兼ねた懇親会での対話の中から拾ってみた。
◎ 部品在庫
彼らは部品屋であるから日本の整備工場を訪問しても興味は部品庫に。しかし、日本の整備工場の部品在庫は極めて少ないのに驚いたようだ。
韓国部品商の日常業務はお得意先のカーセンターの部品庫の巡回管理である。緊急部品はインターネットや電話で注文が入ればオートバイで直ぐに(韓国人はせっかちなので5分以内に届けないと怒られるという)届ける体制が取られているが、需要の大半は定量常備部品で対応できるという。
日本の場合は定期配送を緊急配送便で補っており、定量常備部品は少ない。彼らがその理由を聞くので、日本は「自動車メーカーも多く、車種も多く、部品アイテムも多いので定量常備棚を設定してもカバーできない」「カーセンターの場合は部品が共通化されている消耗部品の需要が中心だが、日本の整備工場の部品需要は機能部品、外装部品と多様である」と一応は答えておいた。なお、韓国では整備業者がインターネットを使い部品を検索して注文がオンラインで部品商に入るという。この面では、日本より進んでいるといえよう。
◎ 純正部品と市販部品
商品の価格はそれぞれのマーケットが決めるもので、市場背景を無視して価格だけを比べても意味がない。ただ、一般ユーザーにとって自動車の補修部品は、どの程度の相場の商品なのかは興味のあるところだ。
韓国の一般ユーザーの平均年収は日本円で300万円程度。財閥系企業の従業員は400万円程度だという。日本に比べて韓国が高いものはガソリン。日本はリッター 98円程度なのに韓国は140円程度で、これが庶民の生活を圧迫しているようだ。
自動車の補修部品は日本と同様に純正部品と市販部品がある。韓国の部品商も純正部品を扱うが、その比率は 10%程度である。市販品の方が純正部品に比べて部品商、カーセンターの粗利が多いが、ユーザーが購入する価格も、市販品の方が遥かに安いという。一般ユーザーは価格面でメリットのある市販品を選ぶが、純正部品にこだわるユーザーも一割程度はいるとのことだ。ただし、純正と市販に価格差があるといってもオイルフィルターのような一般的な商品では価格差は少ないという。なお、価格相場は消耗部品など一般的なものはかなり安い。それでも、彼らの心配は躍進著しい中国から安い部品が流入してこないかということだ。 (編集長・白柳孝夫)