車検整備の規制緩和により競争が激化して、様々なサービス商品が登場してきた。消費者の選択肢は拡大したが、一方で、消費者の誤解を招く「表示」が問題となっている。
例えば国民生活センターには車検サービスに関する相談が年間数百件寄せられており、これらには「事前の見積りより高額の料金を請求された」「部品等の交換についての説明が十分に無かった」などの相談が含まれている。
このため公正取引委員会は、消費者の適正な商品選択に資する観点から「車検整備に関する表示の実態調査」を実施した。
その結果、今回の調査の過程で不適切な表示や消費者に分かりにくい表示が見られたことから日整連に対し公正競争規約の策定を視野に入れて、傘下会員における表示の適正化に向けた取組を行うよう要望した。
公取が指摘した問題表示の一部を紹介しよう。
◆料金の一部を抽出強調
車検整備料金の一部を殊更大きく強調して記載し、部品等の交換がある場合に必要となる部品代や技術料等を小さく表示。
・「安心の低価格6800円」と大きく記載した箇所の上に、小さな文字で「車検基本料金」と記載。
・なんと!ALL13000円
・これ以上いただきません=9500円+公的費用
◆部品料金の表示が不明瞭
表示された料金に加え、部品等の交換がある場合には別途料金が発生するにもかかわらず、その旨が明瞭でない表示。あるいは料金表から離れた箇所に小さく「整備が必要なときは技術料、部品代は別途になります」等と表示。
◆短時間表示を強調する表示
自動車の持込みから車検整備終了後の自動車の引渡しまでの作業が、表示された時間内で終了しない場合があるにもかかわらず「どのような場合に時間内で作業が終了しないか」等についての記載をせず、時間を断定的に示すことにより、あたかもほぼ例外なく時間内で作業が終了するかのような表示。
・スピード25分車検
・受付から車検終了まで、わずか30分
一般消費者に誤解を与えないためには、自動車を預かってから消費者に引き渡すまでの作業をほとんどの場合で終了しうる時間を表示すべきであり、時間内で作業ができない場合はそれがどのようなものであるかを明瞭に記載した表示が必要。
◆定期点検整備が含まれているのか不明瞭
「車検基本料」「予備検査料」の中に定期点検整備が含まれているか否かが不明瞭な表示。
消費者の多くは車検整備の作業内容として継続検査の部分と定期点検整備の部分があることを十分に認識していない。そのため表示した料金で車検整備に必要な全てを行ってくれると誤解する可能性がある。
この他、整備する事業者の表示(認証工場、指定工場)の必要性も指摘されている。
「納車引取り」を廃してユーザーに店頭に来ていただければ、整備工場の効率が上がり、経費も削減できる。さらに、作業の能率を上げてコストを削減し、ハイレベルな整備をより安い価格でお客様に提供するなら問題は無いはずである。単に安さ・速さを強調するのではなく、その理由を説明しなければならない。
今回の指摘を踏まえた公正競争規約が出来れば、車検整備の表示は、かなり変化するだろう。これは整備工場にもメリットを生み出すだろう。あくまでも消費者の視点で、整備ビジネスを正しく認識いただける表示を期待したい。
(編集長・白柳孝夫)