自動車整備工場のネットワークを守るために

最近、思うことは自動車整備のネットワークを、できる限り維持するためには、どうすれば良いかということである。
日本の整備工場の数は、コンビニエンスストアの総数より多く「ちょっと多すぎる」という議論ばかりされてきた。
しかし、「後継者がいない」「求人難が予測される」「車検だけでは儲からなくなってきた…」などの理由で将来、急速に減少に転じることが予想される。
そもそも整備工場の軒数が増えたのは1960年から1970年である。マイカー時代が到来し、定期点検制度が確立され、民間車検工場が発足したため、この商売への参入者が増えたのである。
1965年に20歳で整備工場を始めた社長は、昨年、60歳の還暦を迎えた。最も数が多い認証工場(約5万社)の平均従業員は3人であり、腕(技術)とマンパワーへの依存度が高いビジネスだ。後継者難という問題が大きな影響を与えるのである。
実際に地域の整備工場が、どれだけクルマ社会に貢献しているのか、それはなかなか見えないのである。だから、ネットワークが無くなっても困らないと思う人も多いだろう。
しかし、お盆など長期の休暇中にディーラーに電話をかけると、事故、トラブルなどの緊急の整備はJAFにまわされる。
JAFのロードサービスをやっている整備工場の主人は盆も正月も無いのが実態だ。
「盆であろうと正月であろうと、アルコールを入れたら緊急出動ができなくなります」と彼らは言う。「この商売を始めてから酒は絶ちました」。彼らの悩みはレッカー車に同乗してくれる若い従業員が、なかなか見付からないことである。そのため緊急出動部隊も老齢化している。
一方、都市に人口が集中する中で郡部は過疎化している(国勢調査データ参照)。
こうした地域は自動車の代わる交通手段が無く、自動車が無ければ生活が成立たない。自動車が故障すると通勤、買い物、通院など何も出来なくなる。
しかし、ディーラー拠点やカーショップ等の大型店を開設するのは立地条件が悪い。さらに、これらの地区ではガソリンスタンドも減少しており、例え残ったとしてもセルフ化が進行中だ。
地域に点在する中小規模の整備工場しか、これらの地域にメンテナンス・チャネルは無いのである。
こうした整備工場のネットワークが消えたら、誰が肩代わりするにせよ、ユーザーの負担、関係業界の負担は大きくなる。彼らが予防整備・メンテナンス整備で事業が継続できるよう支援しなければならない。
自動車の平均使用年数が延長する中で、クルマ社会の安全と環境保全を図るため自動車整備の役割は重要になっている。
一方で、自動車の電子制御化が進展し、自動車整備のあり方も大きく変化すると予想される。こうした激変の時期に、経営者が老齢化し、さらに後継者が見付からない整備工場では対応できるとは思えない。
将来に夢が持て、仕事にやり甲斐がある、新しい「地域サービスショップ」への転換が求められている。 (編集長・白柳孝夫)