消費者保護強化への対応
04年6月に消費者が安全で安心できる消費生活を送ることができる環境を整備するため「消費者保護基本法」が36年ぶりに改正され、05年から09年までの5ケ年計画で、関係官庁横断で「消費者基本計画」が推進されている。
こうした中で「消費生活安全法」の改正案が今秋開催の臨時国会に提出され11月28日に可決された。パロマのガス瞬間湯沸器の事故、家庭用シュレッダーで幼児が指を切断した事故で、製造事業者等から行政に事故情報が報告されないことにより、行政の対応が遅れたことへの反省を踏まえて急遽、法案がまとめられた。
改正案では、製造・輸入事業者は重大製品事故が発生した場合は、主務大臣への報告が義務付けられる。重大事故の範囲は、死亡、身体欠損、一酸化炭素中毒等が生じた事故、火災等である。
対象範囲は、一般消費者が生活に使う製品全般であり、自動車本体については、他の法律で厳格な安全規制が行われているために除かれるが、自動車用品やオートケミカル関係は対象となる。
主務大臣は重大製品事故による危害の発生及び拡大を防止のため必要と認めるときは、
1.第一段として製品の一般名称で事故状況を
2.危害等の再発防止のために必要がある時は製品の個別名称等を公表するものとする。
また、小売事業者、修理事業者、設置工事事業者は、事故情報を把握したら製造事業者等へ通知することが責務とされ、製品の回収等への協力も求められる。
消費者への連絡方法は?
以上のような改正により、製造・輸入事業者の国への報告は強化される。しかし、国が寄せられた事故情報を消費者に、迅速・有効に情報伝達が出来るのかという問題がある。
自動車のような登録制度が存在しない製品群である。購入者名簿も存在しない状態で、どのように保有者を見つけるのか。官庁のホームページに掲載しても、多くの消費者が目を通すとは思えない。
最も有効な伝達方法はテレビであるが、広告は膨大な費用が掛かる。
20年以上も前に製造した温風暖房機の回収に膨大な新聞・テレビ広告を使った松下電器のように対応できる業者は、極めて少ないだろう。
「消費者基本計画」の中にも「消費者が危険な製品の回収情報を素早く入手し、事故を回避できるようにする」という重点項目があり「製品の回収情報をわかりやすく消費者に伝える仕組みを検討する」とされているが、具体的にはどうするのだろう?
消費者基本計画のパンフレットには、パソコンの前に座っている消費者のイラストが描かれているが、インターネットは自分が調べたいテーマについて検索するには良いが、広く緊急に情報を告知するには向かないと思う。
実は、これは「消費生活安全法」だけの問題ではないのだ。
エアゾール製品に義務付けられたエア抜きキャップも、消費者がその存在を知り、使用後にキャップに埋め込まれた針を使いエア抜きして廃棄しなければ、メーカー側に出費(一缶当たり5円掛かる)を強いるだけに終わるのである。この問題も、未だに新聞・テレビ等では取り上げられていないため、誰も知らない状態に近い。
安全・環境に対する規制強化は結構だが、業者側が努力するだけで消費者が何も知らない状態は「痛過ぎる」と言うのが業界側の不満である。
「消費者基本計画」に「消費者が自ら環境に配慮して行動できるよう支援する」とあり、国として対策を行うことが明記されている。今後の対応を期待したいが、その具体的な方法論の策定には、かなり知恵を絞る必要がありそうだ。(編集長・白柳孝夫)