「保有台数マイナス管理車両」の領域
「1985年から1992年製のナショナルFF式石油温風機及び石油フラットラジアントヒーターには事故に至る危険性があります。当該対象製品を未点検のままご使用になりますと、一酸化炭素を含む排気ガスが、室内に漏れ出し、死亡事故に至るおそれがあります」
松下電器がこの謹告を出したのが昨年の4月21日であり、すでに1年が過ぎた。
あの暗い声で始まるテレビCMによる告知は、最近は見なくなったが、今年に入ってからも我が家のポストにまた告知葉書が入った。まだ、回収作業は続けられているようだ。
家電には自動車のように登録制度が無いから購入時の新規登録も、中古新規登録も抹消登録もなく、販売店も誰が何処で使用しているのか分からない。
販売したのは20年も前の話である。すでに使用済み家電として廃棄され、シュレッダー業者の手に渡り鉄資源が回収されているかも知れないが、これも把握の方法がないのである。
今回のようなトラブルが発生すれば、多大の費用が必要で、かつ、どこで終わりにしたら良いかの判断も出来ない。
家電と比較すると自動車は登録制度があり、定期点検と車検があるから、販売後もその状態を把握できる。これにより販売された車両も良い状態に保たれ、継続使用により発生するトラブルも解消できる。これは、やはり素晴らしい制度であると思う。
しかしながら、注意が必要なのは近年、自動車の使用年数は大いに伸びたということである。
昨年末に発表された自動車検査登録協力会の「わが国の自動車保有動向」から、年式別の登録車保有台数をグラフにしてみた。かつては初度登録から5年までの車両の保有台数が圧倒的に多かったが、現在は、まさに様変わりである。
こうした時代ではディーラーの顧客管理を如何に高めても、掌握できない部分(車両・ユーザー)は大きく残る。
なぜなら、ディーラーの管理車両は自社が販売した車両であり、当該車両が代替され、今まで乗っていた車両が中古車市場に流出した時点で、その管理は「一時抹消」されてしまうからだ。現在のように、買取専門店からオークションへと車両が流れる時代は、全く別の地域で車両の第二の人生、第三の人生が始まるのである。
平均車齢が若かった頃は、ディーラーの管理能力を上昇していけば良かったが、今では保有台数からディーラーの管理車両を引いた部分が大きくなっている。さらに、これらの車両の車齢も年々、伸びている。初度登録から10年以上を経過した年式以降の登録車保有台数は1220万台ある。これは全登録車保有台数の24%にあたる。初度登録から10年以上を過ぎた車両が、ディーラーに入庫する例もあるが、これはレアケースである。地元の整備工場で整備するのがメインではないか。
この領域(主に整備専業者が担当している)においても適正な整備が行なわれないと、思わぬトラブルが発生し、車両のイメージを落とすことになる。それは製造した自動車メーカーのイメージダウンに繋がるだろう。「ディーラーサービスだけをサポートしていれば良い」という時代では、すでに終わっていると思う。
(編集長・白柳孝夫)