近未来の自動車技術動向

トヨタ自動車は、去る6月13日に環境技術発表会を開催した。これに出席する機会を得たので、ポイントを紹介する。
現在、開発中の環境技術の方向性は以下の3点である。
1.地球温暖化の原因のひとつとされるCO2の削減に向けた燃費の向上
2.大気汚染防止に寄与する排出ガスのクリーン化
3.石油を中心とした化石燃料の消費抑制を視野に入れたエネルギー多様化への対応
これを実現するためには既存のガソリンエンジン車の環境性能をアップすることに加え、ハイブリッド車の車種拡大と低価格化を図り、エネルギーの多様化への研究を強化するという事である。
1.ガソリンエンジン車
05年度にトヨタ車の全クラスにおいて平成22年度(10年)燃費基準を先行して達成した。
2010年を目標に大部分の乗用車系車種で「平成 17(05)年基準排出ガス75%低減レベル」と「平成 22(10)年度燃費基準+10%」以上を達成する。
この実現のため、03年に新開発したV型6気筒エンジンを皮切りに、新型のガソリンエンジンとトランスミッションの開発を推進しており、10年までに一新する。
この一環として、今回、低燃費によるCO2削減と排出ガスのクリーン化を追求した、新型の1.8Lガソリンエンジンと無段変速機を、コンパクトおよびミディアムクラス車用の主力パワートレーンとして開発した。これは本年秋に発売予定の新型車から搭載する計画だ。
2.ハイブリッド車
今回の発表で私が最も興味を持っていたのがトヨタが環境対応のコア技術として位置づけるハイブリッド車の将来展望だ。
97年に発売したプリウスは、本年4月末に累計販売台数が全世界で50万台を突破した。プリウス以外を含めると本年3月末で60万台の販売実績を持つ。
今後も地球環境問題への対応で急速な普及が期待されるが、現状では「100万台を出来るだけ早く達成」というだけで具体的な販売計画は開示されていない。
今回は「ハイブリッド車の普及を目指し、10年代の早い時期までに量販車を含め車種を倍増する」ことと、新たに外部からの充電が可能な「プラグインハイブリッド車」の研究開発を推進することが発表された。
このプラグインハイブリッドは、街乗りのコミューターとして使用するもので各家庭の電源から充電が出来る。一般ユーザーの短距離の通勤や買物程度なら電池エネルギーだけで走行が可能となる。
今後、ハイブリッドの普及のためにはシステムコンポーネントの小型化とコストダウンの(半減を目指している)実現が必要であり、挑戦的に取組んでいきたいとの話だった。
3.エネルギー多様化への対応
この分野は「長期的な取組み」である。新エネルギーについては様々なものが出てきているが、自動車に搭載するのは、エネルギー密度の高い「液体」燃料でないと実用化が難しいと説明していた。
南米や欧州ではバイオエタノール燃料対応車の導入が進んでいるが、トヨタでは全てのガソリンエンジンにおいて、バイオエタノール混合率10%燃料に対する使用時の耐久性確保など、技術的対応を完了した。
日本市場への導入は政府の京都議定書達成計画等にも取り上げられており、関係機関と連携を取って研究を続ける。
燃料電池乗用車については、氷点下での始動時間を大幅に短縮するとともに、マイナス30 ℃での始動を確認した。しかし、市販・実用化には課題が多いということだ。(編集長・白柳孝夫)