細る中年式車の保有台数

今年になって「アフターマーケットの景気が急に悪くなった」という話をあちこちで聞くようになった。それもディーラーではなく、整備工場を対象に商売されている事業者の方に影響が大きいようだ。
もともと、この市場の景気は良くないので、その中でなんとか頑張るしかないのだが、今回のは「何で?」と思うほど落ち込みが大きいという。
要因は様々であるが、中年式車の保有台数の減少が影響を与えていると思われる。
国土交通省の分解整備実態調査のデータによると総整備売上は01年を底に回復している。しかし、その原動力はディーラーであり、整備工場は「減少傾向から横バイに変化した」だけである。
自動車メーカーの補修部品出荷は02年を底に回復に向かっているが、これはディーラーの整備売上の伸びに支えられている。
それでは整備工場の現状はどうか?
表1は高年式車(初度登録から5年まで)と中年式車(6年から10年)の保有台数の推移である。
ディーラーへの入庫が多い高年式車は96年の2611万台から06年の1895万台まで27%も減少している。しかし、02年頃からは減少幅が縮小し、04年からは横バイ状態になっている。これに対して整備工場への入庫が多い中年式車は00年まで増加傾向にあったが、それ以降は減少に転じ、特に04年以降の減少幅が大きいのである。
この傾向に拍車を掛けているのが中古車輸出の増加である。財務省の貿易統計によると06年の中古車輸出は対前年21%増の114万台である。
日本は海外に比べると新車と中古車の価格差(下落率)が大きい。走行距離が短く、高品質の日本の中古車は、海外のバイヤーから見ても極めて「お買い得」なのである。
この状態が続くと価値ある中古車は海外に流出して、国内中古車市場の玉不足は加速する。一方で、中年式車整備市場は入庫台数が減少し縮小することになる。
一方、車齢11年以降の低年式車保有台数は年々、増加の一途で、06年は1307万台となった。しかし、これらの低年式車は故障したら修理されずに廃車になるケースもあると思われる。
分厚い保有車両に支えられたビジネス環境は一変した。
今後、中年式車、低年式車のアフターマーケットを縮小させないためには、徹底した顧客管理とメンテナンス整備の提案で、一台一台を丁寧に整備していくしかないだろう。
(編集長・白柳孝夫))