安全・環境・長期保有の観点から「定期交換部品」を見直そう


定期交換部品は自動車メーカーが交換時期を指定する部品である。この制度の発端はかなり以前で、69年頃に発生した「欠陥車問題」である。今でこそ高品質で定評にある日本車も、当時はトラブル続発で、マスコミの激しいバッシングに合っていたのだ。そこで国土交通省(当時は運輸省)は自動車メーカーに対して定期交換の必要な部品について交換時期を明示するよう通達を出した。さらに交換時期を記載した書面をユーザーに公布するよう通達した。
その後、部品の品質向上により交換インターバルは見直され、品目は減少、期間は延長された。
しかし、95年の車検制度の規制緩和(整備は検査の前後を問わない)を巡る議論に中で定期交換部品は過剰整備のシンボルとして悪役になった。まだ使えるのに交換して車検整備の価格をアップさせている・・・と。
そのトラウマから整備現場では「これは定期交換部品ですので交換が必要です」とは強く言わなくなった。交換率は徐々にダウンした。
一方、95年の改革を契機に、自動車メーカーは交換基準の扱いを変化させた。それまで交換基準は「推奨」項目であったが、規制緩和以降は、より強い意味を込め「指定」項目に変わった。
ユーザー車検等の増加で「推奨」では交換されない可能性が高まると予想されたからである。
この「指定」という言葉には「指定どおりに交換しないと保証できません」という意味を含んでいる。そのためディーラーではワランティとの関係で、交換が徹底されているが、整備工場等では、事業場により取り組みがバラバラである。
一方、定期交換部品の品目や交換基準もメーカーや車種により差が出てきた。
例えば同じモデルのエアフィルタでも、エンジンが違えば交換基準が2倍違う・・・等もある時代となった。環境規制の強化から最近の自動車は精密になっており、関連する部品は定期交換部品においてもエンジンと一体開発されているからだ。
また、大型トラックのフューエルフィルターなど、従来より定期交換の必要性が高まった部品もある。現在のディーゼルエンジンはコモンレールやユニットインジェクターによる2000気圧前後という高圧化、燃料噴射の微細化を目的にした噴射ポンプの高精度化が進んでおり、これまでは問題にならなかった燃料中の極小の不純物も、大きなトラブルの要因となるからだ。
一方、乗用車の定期交換部品では交換インターバルが伸びているが、平均車齢が7年を迎えた今日、7万km毎、10万km毎の交換基準でも適切に交換する必要がある。
定期交換部品は補修部品業界の大切な「飯の種」である。
部品本体だけでなく交換時期、交換の必要性、交換しなかった場合の影響などの情報を提供する必要がある。安全・環境、長期保有の両面から定期交換部品の販売について見直す必要があるだろう。
(編集長・白柳孝夫)