中古・リビルト部品が存在しない補修部品流通はもはや考えられなくなった。
昨年の秋、某大手リサイクル部品流通ネット本部のコンピューターが丸一日ダウンした。
すると、このシステムを使用している全国の地域部品商から「仕事にならないじゃないか」と悲鳴と怒声が上がった。低年式車の保有台数が年々、増加している現在、中古・リビルト部品が存在しない補修部品流通は、もはや考えられなくなっていることの証左である。
わが国では「欧米に比較して中古・リビルト部品の使用量が少ない」と言われてきた。
しかし、その理由は自動車社会の歴史が短く、車齢の若い車両の保有比率が高かったからである。
なにせ90年当時でも6割強の車両が販売されてから5年以内であった。これでは中古部品を使うケースは極めて少ない。経時劣化を理由にした交換需要はほとんど無く、事故車修理の一部に使われるだけである。
これに対し06年は販売されてから5年以内の車両が保有台数の4割を切っている。すなわち6割以上が販売後6年以降の車両であり、さらに、10年以降が全体の2割5分弱ある。
こうした保有構造になると事故車修理のみならず、経時消耗・劣化、不適切なメンテナンスによる故障修理での利用も増えてくる。
自動車部品販売店連合会(GP会)が05年に実施した「中古・リビルト部品の使用実態調査」によると、ディーラー・整備工場の仕入ベースで中古部品が年間1007億円、リビルト部品が年間1020億円の合計2027億円と推計されているが、これは補修部品市場(タイヤを除く消耗部品+機能部品+外装部品)の12%に相当する。
私が整備工場にヒアリングした結果でも、部品仕入価格の約1割は中古・リビルト部品となっている。
◆市場ニーズ
それでは中古・リビルト部品の市場ニーズは、どのようなものか?整備工場、地域部品商へのヒアリングによると、そのほとんどが故障あるいは事故修理の見積もりである。
多いのがディーラーに見積もりを依頼したユーザーが、高額な修理費用に驚き、車両の代替(当該車両は廃車)を考えるものの「ひょっとして、もう少し安くならないか?」と思い近所の整備工場に見積もりを依頼するというケース。
この場合、当初からユーザーの頭の中に予算があり、中古・リビルト部品を活用することで、その予算内で収まるかが勝負となる。整備工場としては予算にマッチする良質な部品を探し回るわけである。もし、ユーザーの希望する予算で修理が出来たら車両の寿命が延びることになり、廃棄物の発生抑制(リデュース)に貢献することになる。
◆今後の市場動向
米国では補修部品市場の45〜55%がリビルト部品といわれる。しかし、これは別に不思議ではない。乗用車保有台数の40%が車齢10年以上であるからだ。機能部品が消耗・劣化するのは車齢10年を超えてからと言われる。保有の40%を占める低年式車から多量のリビルト部品の需要が発生するのである。日本でも10年超の車両が増加しているので、この分野の部品需要は拡大する。
また、設定アイテムも広がるだろう。日本でも最近はエンジンコントロールユニットやスロットルチャンバー等の新商品が投入されている。
ただし、整備現場にこれらの部品の故障を診断できる機器がないと需要は生まれない。整備現場に汎用型スキャンツールの普及が進めば、新しい補修部品需要が生まれると予想される。
(編集長・白柳孝夫)