補修部品業界の短期的な課題


ようやく下がり始めたとは言え、燃料費高騰の影響は甚大だ。 都市部では自動車の走行距離が短縮化し、さらに自動車離れが起きている。東京都心部は人口が増加しているが、自動車保有台数が減少している。
一方、地方は人口が減少しているが、自動車以外の移動手段が無いので保有台数は微減で推移している。しかし、企業でも家庭でも限られた自動車関連出費の多くが、燃料費の高騰に吸い取られ、整備に回せる費用が減少している。整備工場も「厳しい」が補修部品業界も「厳しい」の一語である。
もともと補修部品業界は大きく伸びないが、大きく落ち込まない安定したビジネスであった。
この厳しい時期は、補修部品の販売で最も重要な販売基盤の管理(顧客管理)を強化して乗り切るよりないと思う。
補修部品の需要には以下の特色がある。
1.販路が限られている 全国に約9万ある整備工場(ディーラー、整備工場)にほぼ限定されている。
2.新商品が少ない 補修部品で需要の大きな部品は、消耗部品の10数品目に限られており、品目も変わらない。今後、新商品が登場して急速に市場が拡大するとも考えられない。
3.需要発生の要因は事故、故障、消耗……増加しない。 事故や故障は偶然に左右される。消耗は自動車の走行距離に左右される。どちらも今後、増加する傾向にない。事故は減少傾向にあり、故障は減らさねばならず、消耗のみがメンテナンスの徹底で伸ばす余地がある。
4.地域流通ビジネスである 基本的に注文を受けてから、客先に届くまでのリードタイムが短い。エンジンオイル等汎用性のある商品や、鈑金部品、中古部品など修理時に間に合えば良い商品を除けば、即時納品が求められる。このため、商品をインターネットで遠方より取り寄せるシステムは、一部の商品を除き成り立たない。

以上の特色から補修部品の商売は需要の限られた商品を、限られた地域の、限られたルートに確実に販売するビジネスである。スーパーやコンビニのように店頭に商品を並べて、顧客が選んで購入するようなビジネスではない。自動車やオフィス機器の訪問販売とも違う。
需要に正確・迅速に対応することが求められ、これがスムーズに実現できて、パートナーとして信頼を勝ち取った上で商談が始まるビジネスである。
そこで、まず「自社が、どのような顧客と成長して行きたいか」を明確にしなければならない。そのためには、自社の戦力分析(得意分野、不得意分野)も重要になる。
補修部品のビジネスは物販業というよりサービス業の近く、商品の価値にプラスして、従業員の生み出すサービスの価値が評価される。すなわち人件費、配送費の部分は、経費ではあるが極めて削減が難しいのである。 配送の部分に合理化の余地があるように思えるが、この部分の改革が進まないのは、これが競争力の源泉になっているからだ。
そこで、補修部品ビジネスでは利益目標が重要になる。 補修部品ビジネスを継続させるための人件費・配送費を確保し(カバーし)、さらに需要変動に耐えられる利益の内部留保も必要だ。
次に、売上げが伸びない利益も増えないので売上目標が重要になる。利益を無視した売上アップは本末転倒である。
まず、目標利益を決め、品目別販売計画、利益率計画を立案、これを進捗管理することが、現状では最も重要なのである。(編集長・白柳孝夫)