在庫管理の重要性が高まる
補修部品業界において在庫管理は古くて新しいテーマである。供給責任が常に問われる純正ルートにおいては、以前から緻密な在庫管理が実施され、高い即納率が維持されてきた。
一方、地域部品商においては「在庫が切れていたら、部共販、ディーラーの部品センターや部品卸商の支店に取りに行けば良い」と、この分野の精緻な管理には、あまり熱が入っていなかった。「部品アイテムが多すぎる」という諦めと「デッドストックが恐い」という思いの中で、調達物流に重きを置いた供給体制がメインであった。
しかし、ここ数年、地域部品商においても在庫管理に本格的に取組む企業が出てきた。全国に何社か在庫管理で有名な部品商があり、遠方から見学者がやって来るという。
補修部品のビジネスは、お得意先(整備工場等)からの注文を受け、品番翻訳し、自社内の在庫を探し、在庫がある場合は部品棚からピックアップし、次の配送便に乗せ、伝票と合わせてお届けすれば、後は料金を回収するだけで一件落着である。
ところが、自社内に在庫が無い場合は仕入先に連絡して在庫を確認してもらい、在庫がある場合は納期を確認してからお客様に連絡、取寄せるまで待って頂けるか否かを判断してもらい、取り寄せる場合は、仕入先に正式に発注して、納期を管理し、届いた場合は迅速にお得意先に配送する手順となる。
地域に在庫がある場合は、電話で在庫を確認の上、部品を取りに行き(調達)、多くの場合はその足でお得意先に届けることになる。
いずれにしても、社内に在庫がある場合と無い場合は「天国と地獄」程に手間とコスト、さらにリスク(引当崩れ等)が違うのである。
ガソリン価格の高騰と人手不足に苦しめられている地域流通業者においてコンピュータ管理による在庫管理の導入は、避けて通れない課題となっている。
在庫商品を選定するには、まず、各部品の月平均出庫数を計測し、在庫すべき部品を決定する(例えば月間回転率5以上は在庫する等)。 定量在庫部品をコンピューターに登録し、発注から入庫までのリードタイムを考慮し、在庫量(基準値)と発注点を決めて運用する。商品の需要は変動するため、定期的に基準値の見直しを行い、回転率の悪い部品は非在庫部品の格下げ、需要が増加した部品は、定量常備部品に追加する。
常備部品はそれぞれ在庫場所(ロケナンバー)を設定する。品目別に部品棚を決める場合と、出荷頻度の多い部品を、出荷し易い場所に集める方式がある。
◆入出庫管理・棚落ち処理 コンピューターが管理している在庫点数と、その部品の実在庫は常に一致していなければならない。入出庫に合わせてコンピューター上の在庫点数を更新する必要がある。 コンピューターには在庫があるが、棚に在庫が無いことを「棚落ち」という。誤出荷の可能性があるので調査して、得意先に連絡し、即座に正規品手配しなければならない。
◆販売戦略へ 在庫管理システムを導入すると、大きな副産物がある。 在庫管理は仕入管理、販売管理に繋がるからだ。 在庫部品のABC管理を導入すれば自社の得意分野(何が売れていて、何が売れていないか)が明確に分かる。これに利益管理を結合すれば販売戦略(何を売れば良いか)が立案できる。今の時代、この戦略が最も求められているのである。
(編集長・白柳孝夫)