中国、整備工場にスキャンツール(故障診断装置)の設置を義務付け


本年、3月14日から14日にかけて北京で「オートメカニカ・チャイナ」が開催された。
この展示会を取材した時、最も印象に残ったのは各種ハイテクテスターの充実した展示である。スキャンツール、オシロスコープ、排気ガステスタ、デジタル回路計、4輪アライメントテスタなど各メーカーから多彩に出品されていた。
会場で話を聞いてみると中国では04年に自動車整備業の開業条件が決まり、05年に公布され、3年の猶予期間を経て本年度から実施とのこと。
この開業条件は人事管理、組織管理、安全生産管理、環境保護管理、施設管理、設備管理が詳細に定められており、特に設備管理では1.一般的な設備装置(5品目)2.専用設備装置(41品目)3.主な試験装置(7品目)の合計53品目がリストアップされている。
この中にエンジンのテスト診断装置(オシロスコープ等)、デジタル回路計、故障診断装置(スキャンツール)、排気ガスアナライザーまたは測定器が含まれているのである。
中国の整備工場へのハイテク整備機器の導入はかなりのハイピッチで進んでいるようであるが、これは中国政府の環境規制強化と歩調を合わせたものである。

06年よりOBD規制導入
ユーロIII規制を導入

自動車の急速な普及による都市部の環境汚染は、中国において大きな問題となっており、政府は欧州方式の排気ガス規制を導入して対処している。
01年6月に発表された自動車工業第10次5カ年計画では、ガソリンエンジンの電子制御化と三元触媒コンバーターの装着を推進すると共に、新型車においては欧州の排気ガス規制値を導入することが決定された。
これにより04年7月より中国全土でユーロII規制が導入された。さらに07年からはユーロIIIを導入、10年にはユーロIVを導入し、世界主要国の排出ガス規制と肩を並べる水準まで引き上げる。
これらの規制強化は主要都市では前倒しに導入されており、06年から主要都市でユーロIII規制が導入され、合わせて自動車メーカーには排出ガス浄化装置の故障を検出するOBD(車載式故障診断システム)の装備が義務付けられている。

使用過程車の排ガス検査が
今後の環境行政の決め手

自動車メーカーの工場出荷時にどんなに排気ガスがクリーンでも、ユーザーがエンジンを改造したり、整備が不十分では、その車両が本来持つ環境性能は維持できない。
また、車両を長期に使用すれば、エンジンを最適に燃焼させるバランスが狂ってくる。プラグやエアフィルターの消耗、各種センサの劣化など様々な原因が考えられる。この結果、エンジンの不完全燃焼により排気ガスが汚れるだけではなく、燃費も悪くなりCO2の発生が増加する。
こうした視点から欧米では安全検査の他に、使用過程車を対象にした排気ガス検査を導入している。ドイツでは、この時にOBDのフォルト(故障)メモリの確認が義務付けられており、故障があれば排ガス検査は通らない。このためスキャンツール(故障診断装置)は整備工場の必需品となっている。
こう見てくると、欧州型の排出ガス規制を導入した中国で、整備工場にスキャンツールの導入を義務付けたのは、極めて自然の流れといえよう。(編集長・白柳孝夫)