自動車部品の規制緩和で新たなビジネスチャンスが生まれる

 日米自動車・同部品協議は日米両政府が8月23日に正式な合意文書に署名し、2年ぶりに決着した。日米の主張の隔たりは相変わらず大きく今後に火種が残った今回の日米合意であるが、補修部品に係る規制後和措置は着々と進みわが国アフターマーケットの変革を加速させていくだろう。
 今回の合意内容で特に注目されるのが「構造等変更検査の対象範囲の見直し」である。
 合意文書(日本側の書簡)によると日本政府は本年11月23日までに道路運送車両法第67条に基づく構造変更検査に関わる要件を緩和し、あらゆる軽微な構造または外形の変更について

(1).陸運支局で行われる構造等変更検査に現車を提示すること

(2).自動車検査証を陸運支局に提示すること

(3).重量税を納付すること――の三つの要件を廃止する。
 この「軽微」な構造装置の変更には「溶接またはリベット止め以外の手段により取付けられた自動車用品」が含まれる。具体的には下表の用品がリストアップされているが、これで見る限りは殆どのエクステリア用品を含んでいる。
 用品を装着するなど「軽微な構造変更を受けた自動車」は当然車検も合格する。「用品を外してノーマルに戻し車検を受ける」といった行為は不要になる。
 ここで問題となるのがオーバーフェンダーやグリルガード等の用品の装着により車高、車幅、全長が変更した場合である。従来は自動車検査証の記載事項の変更を行うとともに必要に応じて構造変更検査を受けなければならなかった。それが今後は「溶接またはリベット止め以外の手段により取付けられた用品」なら必要がなくなる。
 また従来は用品を取付けにより構造変更検査を受ければ新規車検と同じ扱いになり重量税の納付が必要であった。そこで全長、車幅の変更になるグリルガード等の装着は新車購入時か継続車検と同時に行うことが多かった。今後は重量税も不要となり、何時でも好きな時に装着できるので販売チャンスは確実に広がるだろう。
 ただし、どのような用品でも装着が自由と言うわけではない。スポイラーの角に鋭い突起があり危険なものは当然認められない。安全性を損なうものや他人に迷惑をかける恐れの多い場合は装着できない。こうした用品には従来より技術基準が決まっており、この条件を満たさない用品は違法となる。
 今回の「構造等変更検査の対象範囲の見直し」は運輸省通達の形でまもなく発表される。今後ユーザーは用品の取付けで国の許可を得る必要はない。ただし危険で違法な用品を装着した場合は街頭検査や車検時にチェックされることになる。
 今回の規制後和は米国側の要求であったが基本的には日本の業界でも以前から要求していた事項である。本来、国民の財産であるクルマをどのように改造・変更しようと他人に迷惑をかけない限り自由であるはずだ。ただし日本の超過密な交通事情の中で個人の自由と他人の迷惑をいかに折り合いを付けるのか。このルールづくりに今後は我々国民が関わっていく必要があるだろう。
(編集長 白柳孝夫)

軽微な構造変更となる自動車部品の代表的リスト
1.ルーフ・ラック
2.トレーラー・ヒッチ
3.サンルーフ
4.エア・スポイラ
5.エア・ダム
6.ボディー・サイド・モルディング
7.バンパー・ガード
8.グリル・ガード
9.エンクローズド・ラッゲージ・キャリア
10.バンパー・マウンテッド・フォグ/ドライビング・ライト
11.ウインチ
12.ヘッドライト/フォグライトカバー
13.サンバイサー
14.けん引フック
15.マフラー
16.排気管
17.トラック・ベッド・ライナー
18.アンテナ
19.ピックアップ・トラック・ランニングボード
20.フード・ウインド・デフレクター
21.フード・スクープ
22.フェンダー・スカート
23.バイク/スキーラック
24.コンバーチブル・トップ
25.デフレクター/スクリーン
26.エグゾースト・パイプ・チップ/エクステンション
27.ミラー
28.ロ−ル・バー
29.ルーバー
30.水/泥跳ねよけ
31.ホイール
32.タイヤ
33.ナンバー取付けステー
34.盗難警報システム
35.バンパー/プッシュ・バー
36.窓フィルム(コーティング)
37.ショックアブソーパ/ストラット
38.けん引ロープ/ひも
39.キャンピングカー用日除け
40.キャンパー・シェル
41.カバー(乗用車.トラック.フェンダー.前端部)    42.グラフィック・パッケージ/テープ・ストリップ・キット
出典・日本国政府及びアメリカ合衆国政府による自動車及び自動車部品に関する措置、1995年8月