アフターマーケットは沖合に出た

開かれた流通システムが新たな市場を開拓する

 川は成長する。初めは地面の窪みにできた雨水の流れであるが、やがて周辺の多くの流れを集め、小川になる。
 小川の水は清く、その流れは速い。そこで周辺の土砂が徐々に削られ、次第に大きな川に成長していく。川の中流域に来ると、水はすでに透明ではないが豊かに清々と流れている。ここに至り川は流域の生態系に恩恵を与えるものと変化する。上流から下流へと養分を運ぶからだ。
 下流に来ると流れは緩やかになる。上流から運んできた土砂が堆積し広大な平野が形成される。
 大河は大きな平野を作り、その中を緩やかに蛇行しながら、やがて海に注いでいく。
 大河はさらに成長する。河口に砂州を作り海を埋めていく。海岸線は徐々に後退し、かつての波打ぎわが平野の中に取り込まれる。
 自動車の市場も同様に発展している。車両が販売される事でアフターマーケットが形成され、保有台数の増加に伴い広大な市場が形成される。商品も当初は補修部品が中心だったが、やがて用品・アクセサリーが登場、さらに現在は車両のドレスアップパーツや改造部品も加わり、多彩なアフターマーケットパーツ市場が形成されつつある。
 市場は常に変化しながら成長している。保有台数の伸びが鈍化すれば成長が止まる訳ではない。
 補修部品のように保有台当たりで需要が予測できる商品とは別に、ユーザーのクルマの使い方や嗜好により購入される商品群が市場の中心になりつつあるからだ。ユーザーの意識は常に変化しており、新しいニーズが生まれれば、新しい市場が形成されていく。
 一つ一つの商品は、それほど大きな市場を持つ訳ではないが、それが集積されて巨大なアフターマーケットを形作るのである。
 この広いアフターマーケットという平野は、しかし常に均質に発展している訳ではない。調子の良い部分もあれば、低迷している部分もある。このため流通システムも市場の変化に合わせて不断に改革していく必要がある。
 現在の補修部品流通システムは、自動車業界がまだ「小川」だった時代に、その基礎が形成された。その頃、流れる水は確かに透明であったが、今は様々な養分が含まれ色が付いている。
 また、当時は川下だと思っていたディーラーや整備工場は、今や中流域となり、その下流にカー用品ショップを始め、新興チヤネルが多彩に展開するようになった。
 そして今、アフターマーケットは規制緩和による流れの変化で、河口の沖合に新たな市場を形成しつつあるように見える。新規需要の創造に向かう市場のダイナミックな変化は、誰の目にも明らかとなった。
 このような変化の時代には、市場の要望への柔軟な対応が最重視される。
 従来の得意先支援は「自社の取扱い商品の売り込み」を最重視したものだが、今後は「得意先の経営全般の活性化」を最重視し、そのための具体的な提案が必要とされる。また市場の求める商品を広く調達して提供する「開かれた流通システム」が求めれている。
 一方、長年にわたり改善を続けてきた物流システムも、経済の右肩上がりの成長期に形成されたものだけに、コストの面などで市場ニーズと合わなくなっている場合が多い。現在、ロジスティツタにおいてもマーケットインが叫ばれているが、市場の声に耳を傾け、新たなシステム構築を目指すべき時に来ている。
(編集長 白柳孝夫)