部品流通システムの役割

システムがなければ補修部品は流通しない
地域アフターマーケットの部品デポも必要

 最近、日本の流通システムについて「多段階的かつ複雑で非効率的のため、小売価格が不当に高くなっている」と言った議論を聞くことがある。また、海外からも「複雑な流通システムが市場アクセスを疎外している」といった見方が支配的である。
 確かに日本の流通システムは、業種により極めて単純なものから複雑で多様なものまでバラエティに富んでいる。こうした面では確かに理解しにくいかも知れないが経済合理性を無視したシステムであるわけではない。
 流通システムの機能を考えてみると、一般に生産者と需要者がそれぞれ複数いる場合には、その中間に卸商社が入った方が流通コストが安くなる。これは卸商社の介在する事により生産者と需要者の総接触回数が少なくて済むからだ。

 日本の場合、生産者の数はともかくとして、人口1万人当りの小売店舗数は欧米諸国に比べて飛抜けて多く(米国の約2倍)、これが流通システムのあり方に影響を与えていると言えそうだ。
 即ち卸商社にとって販売先の数が多く、一軒あたりの売上が少ないのである。そのため市場の隅々までも商品を供給するには1次卸、2次卸、場合によつては3次卸まで必要となるわけである。
 どうも最近の流通構造改革論議の中では卸商社が悪者になる傾向があるが、流通システムは市場にマッチするように形成されており、基本になるのは小売の業態である。
 事実、卸商社1店あたりの小売店数は日本、米国、フランスともに、それ程の差はない。
 さて、次に自動車補修部品の流通について考えてみると、まさに「流通システムがなければ成り立たない」と言える程、その役割は重要である。
 その理由の第一は製造メーカーの数が多い事。日本の自動車メーカーの部品内製率は約30%であり、多くの専門部品メーカーが各種の部品を生産している。
 自動車補修部品が他の商品と違うところは、需要の大小に拘らず全てを供給しなければならないと言うことだ。一方、販売された車両は全国各地で稼動しており需要は広い地域に分散して発生する。そのため注文のあった商品を需要者の元に迅速に届けるにはデポの整備も必要だし配送費を含めコストが掛かる。個々の部品メーカーがそれぞれ直接、需要者に販売することは、物流上から見ても非効率的でビジネスとしても成り立ちにくいと言える。
 そこで、こうした部品メーカーは専門の販売機構を利用することになる。1社では採算の合いにくいアフターマーケット向けの部品販売も専用の部品供給システムを使えば可能となる。このように補修部品流通システムは部品メーカーの共同販売機構として機能しているのである。
 理由の第2は整備の仕事は部品が全て揃わなければ取り掛かれないと言う事。卸商社が必要な部品を取揃えて配送することで作業の効率化が実現しているのである。
 この他、在庫負担の軽減やデットストックの低減等でも地域のおけるデポの役割を持つ卸商社の役割は大きいといえる。自動車メーカーが展開した部販・共販がこの役目を担っている。
 補修部品の価格は生産コストに流通コストを加えたものである。補修部品の場合、流通コスト=配送費に止まらず様々なシステムを必要とする所に、その商品特性、需要特性があると言える。
(編集長 白柳孝夫)

  日本(1994) 米国(1992) フランス(1990)
小売店舗数(1000店)
1500
1526
462
人口1万人当たり小売店舗数
120
60
81
卸売店数(1000店)
429
415
132
人口1万人当たり卸売店数
34
16
23
卸1店当たり小売店舗数
3.5
3.7
3.5