成熟市場に合わせた業態革新を
新車販売の調子が悪い。本年1〜10月累計で、登録車は対前年比97.7%、軽自動車は同95.3%と低迷しており、このままでは94年から続いたプラス基調も4年目でストップということになる。
これは言うまでもなく4月の消費税引上げの影響に加え、深刻化する国内景気の動向が反映されている。
しかし、一方で「新車の市場は今後もこういうものではないか」という見方が広まりつつある。
日本の自動車市場は成熟期に入り91年頃より欧米型の循環型市場に移行している。
バブル崩壊後の新車販売の動向を見ると、例えば登録乗用車でも普通乗用車と小型乗用車は異なる動きをしている。国内総販売台数がピークに達した90年を100とした場合の登録乗用車の販売推移をグラフにしてみた。
これによると普通乗用車は90年以降も成長を続け、96年度には90年度比84%増となった。また97年度は大幅減となっているが、それでも1〜10月実績で90年比44%増である。一方、小型乗用車は91年度より長期低迷期に入っている。この市場は普通乗用車程の変動はなく、槻ね90年度比29〜21%減で推移している。
この結果、保有構造にも大きな変化が生じている。普通乗用車の平均車令は3.28年と5年前より0.39年若返っているのに対して、小型乗用+早は5.51年と0.91年も伸びている(データは96年3月末現在)。
資金的な余裕もありトレンドに合わせて新車を買い替える層は、確かに一定程度形成されている。
しかし、こうした層は極めて浮気で、ブランド(メーカー)に対する愛着も少なく、自分好みの新車が発売されたら、すぐに買替えを考える。一方、クルマは単なる下駄替わりという層が分厚く形成されつつあり、例え査定がゼロになろうとも気にせずに乗り続けるのである。
こうした市場変化の中で、ディーラーも今のままの業態では苦しくなるだろう。
新車が売れるかどうかは商品力が勝負と言っても、ヒットするかどうかは浮気なユーザーの感性とマッチしていなければならず予想がつきにくい。新車の需要が多少振れようとも企業が存続できるようにしておかなければ、ヒット商品が発売された時に、販売責任を果たすことも出来ないのである。
すなわち、今後のディーラーは車両を代替する、しないに関係なく、車両を保有することにより発生する市場(アフターマーケット)に対するアプローチを強化し、その収益をランニングコストに生き延びることを指向せざるを得ないのである。
すでに自動車市場の成熟化が進んだ欧米市場では、ディーラーにおいてもアフターマーケットビジネスへの取組がトレンドとなっている。日本のディーラーは欧米と比べて「新車販売利益が少なく、部品とサービスでのみ利益を上げている」と非難する人達もいるが、成熟市場となればユーザーのカーライフニーズへの総合的な対応が必要なのは当然の事である。
欧米のディーラーの利益構造も90年代の始め頃に大きく転換しており、新車利益ょりアフターマーケット利益の方が遥かに多くなっている。その変化も急速で中古車販売、自動車リース、整備等の他に、各種のアフターマーケットビジネスを取込み展開している。
日本のディーラーも成熟市場に合わせた業態革新を急がねばならないだろう。
(編集長 白柳孝夫)